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IT資産管理が属人化すると企業にどんなリスクがあるのか

IT資産管理が属人化すると企業にどんなリスクがあるのか

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企業のIT環境は、近年急速に多様化しています。
PC・スマートフォンなどのハードウェアだけでなく、SaaS・クラウドサービス、ライセンス契約、セキュリティツールなど、管理すべき資産は年々増加しています。

しかし、実際の現場では「誰が・どの資産を・どう使っているのか」が正確に把握できていない企業も多いのが実情です。特に中小〜中堅企業では、IT専任者が存在せず、総務や経理が“情シス業務を兼任”しているケースが少なくありません。
その結果、IT資産管理が「特定の担当者」に依存し、属人化が進むという課題が生まれます。一見、「あの人が全部わかっているから大丈夫」に見える状態ですが、実際には企業にとって大きなリスクを抱えているのです。

本記事では、「IT資産管理の属人化」がなぜ起こるのか、そしてその構造的な原因と背景を解説します。

なぜIT資産管理の“属人化”が起こるのか

属人化の原因は、担当者のスキルや意識ではなく、組織構造と業務環境にあります。
特に、ITに詳しい人が社内に1人しかいない場合、その人が自然と「何でも屋」的に対応するようになり、業務が個人に集中していきます。
さらに、管理を効率化しようとするあまり、Excelやスプレッドシートなど“個人の使い慣れた方法”で管理を続けてしまうことも、属人化を助長する要因です。

1人情シス・兼任体制が生み出す構造的問題

業務範囲が広く、更新や棚卸しが後回しになりやすい

「1人情シス」や「兼任情シス」では、担当者が抱える業務範囲が非常に広いのが特徴です。PCの設定、アカウントの発行、セキュリティ対応、トラブル対応など、“今すぐ対応しなければならない業務”に追われるため、IT資産台帳の更新や棚卸しといった“緊急ではないが重要な業務”が後回しになります。結果として、

  • 管理台帳が古い情報のまま放置される
  • 退職者のアカウント削除が漏れる
  • 契約ライセンス数が実態と合わない

といった問題が発生し、属人化した状態を加速させていきます。このような構造的問題は、担当者の努力では解決しづらく、業務設計そのものを見直す必要があるのです。

「自分だけが分かる仕組み」になりやすい現場構造

日々の業務を効率化しようとする中で、担当者が自分なりに工夫して作り上げたファイルや運用ルールは、やがて“その人しか分からない仕組み”に変化します。「ファイルの更新手順」「管理項目の意味」「命名ルール」などが口頭レベルでしか共有されていないケースも多く、引き継ぎが困難です。

この状態では、担当者の退職や長期不在が即座に業務停滞につながり、企業としてのリスクが個人の健康・在籍状況に依存する危険な構造が生まれます。

Excel・スプレッドシート運用の限界

情報更新漏れ・重複・バージョン不整合

多くの企業では、手軽さからExcelやGoogleスプレッドシートでIT資産を管理しています。しかし、管理対象が数十台から数百台に増えると、更新作業が煩雑になり、正確な情報維持が困難になります。

  • 「最新版の台帳はどれ?」と混乱する
  • ファイル共有のたびにバージョンが分裂する
  • 一部の列や数式が破損して情報が欠落する

これらの問題は、時間が経つほど積み重なり、管理の信頼性を著しく低下させる結果を招きます。

属人化の温床になる「管理ファイルのブラックボックス化」

Excelやスプレッドシートは自由度が高い反面、担当者の判断に強く依存する設計になりがちです。「この列の意味は何か」「どこまでが最新情報か」といった定義が曖昧なまま運用が続くと、他の人が見ても理解できない“ブラックボックス”となります。

特に「資産管理最終版最新版v3.xlsx」などのファイルが複数存在する場合、どれが本物か分からなくなり、結果的に「誰も触れない台帳」と化してしまいます。このような状態では、ツールが存在しても実態としての“管理”が行われていないのと同じです。

属人化したIT資産管理が招く5つのリスク

IT資産管理の属人化は、単なる「効率の悪さ」だけでは済みません。
実際には、企業のセキュリティ・業務継続・コスト・人材リスクに直結する深刻な問題を引き起こします。
ここでは、代表的な5つのリスクを具体的に解説します。

① 情報漏えいリスク

最も大きなリスクが「情報漏えい」です。
属人化が進んだ環境では、退職者のアカウント削除漏れや、不要なライセンスの放置などが頻繁に発生します。たとえば退職後もクラウドツールのログイン情報が残っていれば、意図せず社外から情報にアクセスされる可能性があります。
また、誰がどの端末を利用しているのかが不明瞭なままでは、盗難・紛失時に迅速な対応が取れません。

セキュリティインシデントが発生した際、管理台帳が正確でないと、被害範囲を特定できず、初動対応が遅れるという二次被害にもつながります。

② 監査・コンプライアンス対応の遅延

監査やISMSなどのコンプライアンスチェックでは、IT資産の現状把握と証跡提出が求められます。属人化している場合、これに対応するたびに「最新の台帳はどこ?」「誰が管理しているの?」という混乱が生じ、提出が遅れることがあります。

結果的に、監査対応が担当者の残業・徹夜作業に依存するなど、非効率な運用が常態化します。最悪の場合、提出ミスや情報不足により「監査指摘」や「認証剥奪リスク」につながることもあります。

③ 無駄なコストの発生

属人化により、IT資産の利用実態が把握できなくなることで、無駄なコストが発生します。

  • すでに使われていないライセンスを更新してしまう
  • 同一ツールを複数部署で重複契約している
  • 保守契約の解約を忘れて支払いが継続している

こうした“サブスクリプションの野放し状態”は、企業の見えない支出として積み上がっていきます。IT資産管理を仕組み化するだけで、年間数十万円〜数百万円のコスト削減につながるケースも珍しくありません。

④ 業務引き継ぎが困難に

属人化した管理体制では、担当者が退職・異動・長期休暇を取った際に、業務が完全にストップするリスクがあります。
特に、「台帳の更新手順」や「機器の貸与履歴」「ライセンス発行ルール」などが明文化されていない場合、後任者が内容を理解するのに膨大な時間を要します。
結果として、業務の継続性が断たれ、トラブル対応や新規導入プロジェクトが滞るといった問題が発生します。
属人化は、企業の成長スピードを鈍化させる“見えないボトルネック”でもあるのです。

⑤ 情シス担当者の精神的負担

属人化の最大の被害者は、実は担当者本人です。「自分しか分からない」「自分がいなければ回らない」状態は、責任とプレッシャーを過剰に背負うことになります。

  • 休日や夜間でも問い合わせが来る
  • ミスがあった際にすべて自分の責任になる
  • 誰にも相談できず、常に業務に追われる

このような環境では、バーンアウト(燃え尽き)や離職リスクが高まります。結果的に、さらに属人化が進むという悪循環に陥ってしまうのです。

属人化を防ぐために必要な考え方

属人化を解消するためには、単にツールを導入するだけでは不十分です。重要なのは、「管理」から「仕組み化」への意識転換です。

“管理”ではなく“仕組み化”を意識する

「管理する」とは、“人が作業すること”を前提としています。一方、「仕組み化」は、“作業が発生しない仕組みを作ること”です。たとえば、

  • PCの貸与・返却をワークフロー化して自動記録
  • SaaSのアカウント連携で利用状況を自動更新
  • 契約期限をシステムが自動通知

といった“人がやらなくても更新される状態”を作ることが理想です。
こうすることで、担当者が変わっても情報が最新のまま保たれ、業務の再現性と継続性が担保されます。

ツール導入=ゴールではなく、“運用設計”がカギ

IT資産管理ツールを導入しても、運用ルールが整備されていなければ、再び属人化します。
ポイントは、ツールと業務フローを一体で設計することです。

  • 誰が、いつ、どの情報を更新するのか
  • どの段階で承認・記録されるのか
  • 部署間で情報をどう共有するのか

これらを明確にすることで、組織全体での“運用の型”が生まれます。ツールはその型を支える手段であり、目的ではありません。

仕組み化を支える3つの実践ステップ

属人化を防ぐために、まずは次の3つのステップから取り組むのが効果的です。

① 現状資産の可視化

最初のステップは、「今、何がどこにあるのか」を明確にすることです。
ハードウェア、ソフトウェア、SaaS、ライセンスなど、管理対象を洗い出し、リスト化します。可視化するだけでも、重複契約や放置資産の発見につながります。

② 管理責任とルールの明確化

次に、誰がどの範囲を管理するのか、ルールを明確にします。
「資産登録は総務」「アカウント発行は情シス」「監査時の提出は経理」など、責任を分散させる設計がポイントです。
属人化を防ぐには、“1人が全てを握らない構造”を作ることが不可欠です。

③ 自動化ツールの活用

最後に、属人化の負担を根本から減らすために、自動化ツールを導入します。
台帳更新や棚卸しの作業を自動化することで、ミスを防ぎ、担当者の精神的負担も軽減されます。

代表的なツール例:

  • IT資産管理ツール(ITAM系)
  • SaaSアカウント連携ツール(SSO・ID管理)
  • 台帳自動生成システム

よくある質問(FAQ)

Q. IT資産管理ツールを導入するほどの規模ではないと思うのですが?

社員100名規模を超えたあたりでExcel運用は確実に限界を迎えます。資産数やアカウント数が100を超えると、Excelでは更新と整合性維持が困難です。
ツール導入により、台帳更新・棚卸し・監査対応の時間を半減させることができます。

Q. 無料で始められる方法はありますか?

無料トライアルを活用して、まずは“見える化体験”をするのが最適。多くのIT資産管理ツールには無料トライアルがあります。自社のExcel台帳を取り込み、どの程度自動化できるかを体験することで、導入効果を具体的に実感できます。

Q. 上司を説得するには?

「属人化リスク=業務継続リスク」として提示するのが効果的です。「自分がいなくなったら業務が止まる」というリスクは、経営的に大きな損失です。ツール導入を“コスト削減”ではなく“リスク回避”として伝えることで、上層部の理解を得やすくなります。

まとめ:属人化を防ぐことが、“自分を守る”第一歩

属人化は「担当者が頑張っている証拠」ではなく、企業全体のリスクシグナルです。
仕組み化により、担当者の負担を減らし、組織全体の安定を守ることができます。

“自分しか分からない状態”を脱し、“誰でも運用できる仕組み”を作ることが、結果的に自分自身を守る最も確実な方法です。

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情シスパートナー編集部
情シスパートナー編集部
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