社員増加で情シスがパンクする前に|業務負荷の実態と増員・外注・ツール活用の判断基準
「社員が増えるのはいいことなのに、なぜこんなに追い詰められているんだろう」
そう感じている情シス担当者は、決して少なくありません。
会社の成長に伴い、PCのキッティング、アカウントの発行、SaaSの管理、ヘルプデスク対応など、気づけばこなしきれない量の業務が毎日積み上がっていく。
それでも経営層からは「システムはクラウドになったんだから、人はそんなにいらないでしょ」と言われてしまう。
この記事では、社員増加によって情シスの運用負荷がどう変化するかを整理したうえで、自社の現状を客観的に把握する方法、そして増員・外注・ツール導入の判断軸と経営層への説明材料の作り方まで解説します。
目次
社員増加で、情シスの業務負荷はどう変わるのか?

従業員が増えると何が「比例して増える」のか
社員数が増えると、情シスの業務量はほぼそれに比例して増えていきます。
「クラウド化したから運用が楽になったはず」と思われがちですが、実際に増えるのはシステムそのものの管理コストではなく、人に紐づく業務の量です。
具体的には、以下のような業務が社員数に連動して増加します。
入退社・異動対応
社員が増えるほど、入社のたびに発生するPC調達・キッティング・各種アカウント発行の件数が積み重なります。
退社時のアカウント失効漏れはセキュリティリスクに直結するため、一件一件を確実に処理する必要があります。
ヘルプデスク対応
「パスワードを忘れた」「このSaaSの使い方がわからない」「VPNにつながらない」
こうした問い合わせは、社員数に比例して増えていきます。
1人あたりの問い合わせ頻度が同じでも、社員が100人から200人に増えれば、対応件数も単純に倍になります。
SaaS・ライセンス管理
成長期の企業では、部門ごとに新しいSaaSが次々と導入されます。
それぞれのライセンス管理、契約更新、利用状況の把握は情シスが担うことが多く、SaaSの数が増えるほど管理負荷は増していきます。
セキュリティ管理
MDMの適用台数、アカウントの権限管理、セキュリティパッチの適用状況の確認。
これらも管理対象の社員・デバイス数に比例して業務量が増えます。
セキュリティ対策は後回しにするほどリスクが高まるため、「後でやる」が積み重なると危険な状態に近づいていきます。
クラウド化によってオンプレミスのサーバー管理は不要になりましたが、その分だけSaaSの数が増え、管理すべきアカウントや契約も増えているのが現実です。
「楽になった」のは特定の業務だけで、情シス全体の業務量はむしろ増加傾向にあります。
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一人情シスが限界を迎えるサインとは
業務量は少しずつ増えていくため、「いつ限界を超えたか」に自分では気づきにくいのが一人情シスの難しさです。
以下のような状態が続いているなら、すでに危険なラインに差し掛かっている可能性があります。
日常業務のサイン
- 問い合わせへの返答が翌日以降になることが増えた
- 入退社対応でアカウント発行やPC準備が入社日に間に合わないことがある
- やろうと思っていた改善業務が、何ヶ月も手つかずのままになっている
セキュリティ面のサイン
- セキュリティパッチの適用が後回しになっている
- 退社した社員のアカウントが残ったままになっていたことがある
- 各部門が勝手に導入したSaaS(シャドーIT)を把握しきれていない
組織面のサイン
- 自分が休むと業務が完全に止まる
- 引き継ぎできる人が社内にいない
- 「とりあえず情シスに聞けばいい」という文化が広がっている
これらは単なる「忙しさ」の問題ではなく、セキュリティ事故・情報漏洩・業務停止といった経営リスクに直結するサインです。
「今は大丈夫」という感覚のまま放置していると、ある日突然取り返しのつかないトラブルが発生することがあります。
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増員すべきか?外注すべきか?自社に合った解決策の選び方

まず自社の「情シス業務量」を可視化する
増員するか、外注するか、ツールを導入するか。
この判断を正しく行うためには、まず「自社の情シスに実際どれだけの業務量が発生しているか」を数値で把握することが出発点になります。
感覚で「忙しい」と伝えても経営層には伝わりません。業務量を可視化することで、はじめて客観的な判断材料になります。
| 項目 | 計測方法の例 |
|---|---|
| 月間問い合わせ件数 | チケット管理ツール・メール件数で集計 |
| 入退社対応件数 | 人事データと照合して月次集計 |
| 管理しているSaaS数 | 契約一覧を棚卸しして総数を把握 |
| 管理デバイス・アカウント数 | MDM・ディレクトリサービスで確認 |
| 1件あたりの対応工数 | 1週間だけでも記録をつけてみる |
この数字を並べると、「月間◯時間が運用保守業務に費やされており、改善業務に充てられる時間がほぼゼロ」という実態が浮き彫りになります。
これが、経営層への説明にも、解決策の選定にも使える共通の土台になります。
増員・外注・ツール活用、3つの選択肢の特徴と向き・不向き
業務量が可視化できたら、次は解決策の選択です。
大きく「社内増員」「アウトソーシング」「ツール導入による効率化」の3つがあり、それぞれに向き不向きがあります。
| 選択肢 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 社内で人材を増員 | 機密性・判断が必要な業務が多い | 採用・育成に時間とコストがかかる |
| アウトソーシング活用 | 定型業務・繰り返し作業が中心 | 業務の切り出しと要件整理が必要 |
| ツール導入で効率化 | 自動化できる運用業務が多い | 導入・定着までの工数を見込む必要がある |
3つは「どれか1つを選ぶ」ものではなく、組み合わせて使うのが現実的です。
たとえば「定型のヘルプデスク対応は外注し、空いた時間でセキュリティ対策の強化に取り組む」といった形が、成長企業ではよく見られる対応です。
アウトソーシングで任せられる業務・任せにくい業務の線引き
外部委託を検討するうえで、「どこまで任せられるか」の線引きが重要です。
任せる範囲が曖昧なまま進めると、情報漏洩リスクや品質のばらつきにつながります。
外注しやすい業務(定型・マニュアル化しやすい)
- PCキッティング・初期セットアップ
- ヘルプデスク対応(1次対応)
- アカウント発行・削除の定型作業
- 資産管理・棚卸し作業
- SaaSのライセンス管理補助
社内で持つべき業務(判断・機密性が高い)
- セキュリティポリシーの策定・更新
- 社内システムの設計・アーキテクチャ判断
- ベンダー選定・契約交渉
- インシデント発生時の対応判断
- 経営層・他部門との調整業務
外注後に情シス担当者が担う役割は「手を動かす人」から「管理・判断する人」へと変わります。
委託先のディレクションやセキュリティ要件の確認など、内製で持つべきスキルの重要性はむしろ高まります。
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経営層を動かす「情シス増員・改善の根拠」の作り方

「感覚論」を「業務負荷データ」に変える方法
経営層に増員や外注の必要性を伝えるとき、「業務が多くて回らない」という訴え方では動いてもらえないことがほとんどです。
必要なのは、業務量と不足リスクを数字で示すことです。
経営層に刺さる伝え方の3要素
1. 業務量の増加を数字で示す
たとえば「社員が100名から180名に増えた結果、月間問い合わせ件数は◯件から◯件に増加し、対応工数は月◯時間に達している」というように、増加の推移を数値で伝えます。
2. 現在発生しているリスクを具体的に示す
「管理対象デバイスのうち◯%がMDM未適用のまま運用されている」「退社済みアカウントの失効確認が◯件未処理」など、放置している状態をデータで可視化します。
3. 解決しないとどうなるかをコストで示す
セキュリティ事故が発生した場合、外部調査・システム復旧・顧客対応にかかるコストは、増員や外注のコストをはるかに上回ります。「今は予算がない」ではなく、「対応しないリスク」と比較する形で伝えましょう。
稟議書・報告資料に使える表現と構成の例
経営層への説明資料は、以下の流れで組み立てると伝わりやすくなります。
| 流れ | 内容 |
|---|---|
| ① 現状の業務量 | 月間対応件数・工数・管理対象の規模感を数字で示す |
| ② 業務量の推移 | 社員数が増えるほど業務量も比例して増えていることをグラフや表で視覚的に伝える |
| ③ 現在のリスク | 未対応件数・遅延状況・セキュリティ上の懸念点など、放置している状態を具体的に示す |
| ④ 他社との比較 | 同規模企業の情シス体制と自社の差分を客観的なデータで示す |
| ⑤ 対策案とコスト | 増員・外注・ツール導入それぞれの費用と効果を比較する |
| ⑥ 推奨する対応 | 上記を踏まえた最終的な提案をまとめる |
資料で使いやすい表現の例
- 「社員数の増加に伴い、情シス業務量は過去◯ヶ月で約◯倍に増加しています」
- 「現状の体制では、同規模他社の標準的な情シス担当者数と比較して◯名分の不足が生じています」
- 「未対応のまま放置された場合、セキュリティインシデントや監査対応の遅延が発生するリスクがあります」
- 「外部委託により定型業務を切り出すことで、月◯時間の工数削減と体制リスクの低減が見込めます」
「情シスが大変だから助けてほしい」ではなく、「会社の成長を守るために、今この投資が必要だ」という視点で資料をまとめることが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 従業員が何人になったら情シスの増員を検討すべきですか?
業務内容や兼任の有無によって異なるため、一概に「◯名を超えたら」とは言えません。
それよりも「月間対応工数」や「未処理件数の推移」を指標にするほうが、自社の実態に即した判断ができます。
まず業務量を数値化し、それをもとに増員・外注・ツール導入のどれが最適かを検討する順序が合理的です。
Q. アウトソーシングを活用すると、情シス担当者の仕事はなくなりますか?
なくなりません。
定型業務を外部委託することで、セキュリティ対策の強化・社内システムの改善・IT戦略の立案など、本来注力すべき業務にスキルと時間を使えるようになります。
むしろ、委託先のディレクションや要件整理など、より高度な判断業務の比重が増すケースがほとんどです。
Q. 経営層に「クラウドだから人はいらない」と言われます。どう説明すればいいですか?
クラウド導入によってオンプレミスのサーバー管理は不要になりますが、アカウント管理・SaaS運用・セキュリティ対策・ヘルプデスク対応は従業員数に比例して増え続けます。
「楽になった業務」と「増えた業務」を並べて示したうえで、「対応できない場合にどのリスクが発生するか」をセットで伝えることが効果的です。
他社の情シス体制との比較データも、経営層の理解を得るうえで有効な材料になります。
体制の整備は、会社の成長を止めないための「必要な投資」
社員数が増えることは、会社にとって喜ばしいことです。
しかしその成長を支えるインフラとして、情報システム部門の体制が追いついていなければ、セキュリティリスクの増大・業務効率の低下・担当者の離職という形で、成長の足を引っ張る要因になりかねません。
「なんとか回っている」状態を放置せず、「きちんと回る体制」に変えることが、会社の成長を守るための投資です。
体制の見直しをご検討中なら、情シス業務のアウトソーシングも有効な選択肢のひとつです。
情シスパートナーは、成長期の企業を中心に情シス業務の外部委託を支援しています。
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